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お薬研究所 : 2010年11月号-#1 [2010.11.09up]

お薬研究所では「薬局でのこんな相談」や「病気の話」など、皆さまの健康に役立つ情報を掲載しております。
  » 病気の話「腰痛」
     ├ 1. 概要
     ├ 2. どんな病気?
     ├ 3. どんな治療?
     └ 4. 生活アドバイス
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病気の話「腰痛」

腰痛“腰が痛い!”誰でも一度くらいは経験した事があるでしょう。
健康に関する最も関心の高い疾病と言われています。
2足歩行能力を獲得した人間だからこそ発症する疾患とも言われており、4足歩行の動物では前足を動かしている肩と後ろ足に繋がる腰の2ヶ所で自分の体重を支えていますが、人間は全体重を足と腰のみで支えている為、簡単に言えば2倍の力が常にかかっているのです。そこで、今月は腰痛のお話です。

どんな病気?

腰痛と言ってもその症状は実にさまざまです。なんとなく腰が重たい(鈍痛)や電気が走ったように痛む(電撃痛)さらに、安静時に痛いのか?あるいは腰を動かした時に痛むのか?
まずは、その原因を見つけなければなりません。長時間同じ姿勢を続けるなど筋肉が過度のストレスを受ける事により炎症を起こしてしまう、あるいは腰椎等の変形により神経を圧迫し症状が出る、さらに内臓疾患が原因で腰痛が起こる事もあります。
脊椎は、26個の椎骨という骨が連結してできています。上から7個までが頸椎、次の12個が胸椎、次の5個が腰椎、仙骨、尾骨と繋がっています脊椎は、26個の椎骨という骨が連結してできています。上から7個までが頸椎、次の12個が胸椎、次の5個が腰椎、仙骨、尾骨と繋がっています。
そして、腰椎は上からL1~L5までの番号を付けています。また、脊椎は左の図からもわかるように緩やかなS字カーブをしており、姿勢のバランスをとり運動の衝撃や筋肉の負荷を和らげているのです。
椎骨と椎骨の間には、椎間板と呼ばれる軟骨などの軟らかい組織がありクッションの役割を果たしています。加齢によりこのクッションが減ってくると腰痛を訴える事が多くなります。
<診断方法>
腰椎X線・・・腫瘍などの破壊性病変の有無、側湾、すべり症、椎間板腔狭少化
MRI・・・・破壊性病変の有無、椎間板変性、膨隆の程度、神経根の圧迫
さらに、手術を予定する場合は脊椎造影、CT、神経根造影などの検査も行い、患部の状態を正確に把握する必要があります。
次に、腰痛の主な原因疾患とその症状についてです。

(1) 腰椎捻挫(ギックリ腰) → 重い物を持ったり、腰を急に捻った時に突発的に起こる。急性期に激しい痛みを起こすが多くは数日で軽快する。
(2) 筋膜性腰痛 → 医学的な異常は確認されず。腰背筋の疲労や炎症により鈍い痛みが生じる。
(3) 腰椎椎間板症 → 椎間板の水分量が減少し、椎間関節に負荷がかかり腰痛を起こす。椎間板の狭少化は見られるが変形はなく下肢痛やしびれは起こらない。
(4) 椎間板ヘルニア → 椎間板の外側に亀裂ができ、椎間板の中心にある髄核が漏出して神経が圧迫され激しい痛みを生じる。下肢にも痛みやしびれが出たり、排便に影響する事もある。
(5) 変形性脊椎症 → 椎間板の水分量が減少し椎間間隔が狭くなり椎体の周辺にとげ状の骨が形成される。起床時などの動きはじめに痛みが出る事が多い
(6) 脊柱管狭窄症 → 骨、椎間板、靭帯の変性により神経の通る脊柱管が狭くなり、神経が圧迫される。歩行中に症状が悪化し、腰痛、しびれ等により連続して歩く事ができない。
休息により再び歩行が可能になるのが特徴。
(7) 腰椎分離症 → 椎骨の一部が疲労骨折して離れた状態。激しい痛みはないが、圧痛を生じる。多くの場合、保存療法で骨癒合し治る。
(8) 腰椎すべり症 → 縦に連なっている腰椎が前後にずれた状態。ずれた椎体が神経を圧迫し強い痛みを起こす。分離症から移行したり椎間板の変性が原因で発症する。
(9) 骨粗鬆症 → 骨量が減少し、椎体がもろくなり椎体の圧迫骨折を起こす。脊椎全体の強い痛みや円背、身長の短縮などの症状を生じる。

腰痛しかし、検査を実施しても医学的な異常が確認されず、じっと安静にしていてもコルセットで保護しても痛みが軽減されなかったり、血尿や腹痛も併発している場合には内臓疾患が原因となっている事もあります。
腎臓結石、尿管結石、婦人科系の疾患、胃・十二指腸潰瘍、胆嚢炎、膵臓炎、胆石、腹部大動脈瘤など・・・。
適切な検査を実施し、まずは原因疾患を治療する事が大切です。

どんな治療?

<薬物療法>

薬物療法の主体は非ステロイド系消炎鎮痛剤です。利用可能な薬剤は多種あります。大別すると酸性薬剤と塩基性薬剤に分類されますが、大部分は酸性薬剤です。塩基性薬剤は、鎮痛、消炎効果が弱く、副作用の為、酸性薬剤が使用できない場合に用いられます。

薬物療法の主体は非ステロイド系消炎鎮痛剤です 副作用としては・・・・
  1. アレルギー反応(過敏症、ショック、虚脱感、体温低下等)
  2. 腎障害(浮腫、尿量減少、高血圧)
  3. 出血傾向,骨髄抑制(貧血、血小板減少、白血球減少)
  4. 消化器症状(消化性潰瘍、胃腸出血、悪心、嘔吐)
  5. 肝障害
  6. 中枢神経系症状(眠気、めまい、耳鳴り)
  7. 喘息の誘発

これらの中で特に発生頻度の高い消化器症状の緩和を目的に次々に新しい薬剤が開発されています。

(1) アリール酢酸系薬剤
効果強い薬剤多い。(ボルタレン、クリノリル、レリフェン、インフリー、ハイペン)
(2) プロピオン酸系薬剤
消炎、鎮痛、解熱効果を併せ持つ。副作用比較的少ない(ブルフェン、ロキソニン、ニフラン)
(3) オキシカム系薬剤
持続性あり。(モービック、フルカム)
(4) セレコキシブ
消化器症状なく、鎮痛効果大きい。(セレコックス)
(5) 非酸性薬剤
ソランタール
(6) 経皮吸収剤
モーラス、セルタッチ、アドフィードなどのシップ。クリームローション、軟膏などの外用剤も多種あり。
(7) 筋弛緩剤
急性腰痛に有効。(テルネリン、ミオナール等)
(8) 抗うつ剤
疼痛改善に効果ある場合あり。
(9) ビタミンV12
神経障害がある場合には、併用する。

<理学療法>

(1) 低周波治療
生体電流に近いパルスを流す事により衰えていた神経機能の回復を促進させる方法。痛みの電気信号を遮断する事で痛みを軽減。
(2) 牽引治療
頸部を引き上げる事により狭くなった脊椎の幅を広げる事で椎間板への圧力を軽減し神経の圧迫を取り除く。
(3) 温熱療法
全身を温める事により新陳代謝を促進し血行改善により自然治癒力を高める。
ブロック注射

<ブロック注射>

(1) 椎間板内ステロイド注射
レントゲン透視下で行われ、椎間板の中心から突出したヘルニアに向けてステロイドを注入。
(2) 腰部硬膜外ブロック
レントゲン透視下で行う事が多く、背骨と背骨の間にブロック針を刺し、硬膜の手前まで針を進め薬液(局所麻酔剤場合によってステロイド)
(3) 神経根ブロック
レントゲン透視下で行われ、神経根に直接針を刺し痛み止めを注入する。

生活アドバイス

生活アドバイスまずは、正しい姿勢で生活する事を心がけましょう。
人間の腰にかかる力は、体重70kgの人で立っている時におよそ100kg,軽くお辞儀をした姿勢で150kgと言われています。日頃から正しい姿勢と長時間に同じ姿勢を取る事を極力避けるよう注意しましょう。

立つ姿勢
あごを引き、背筋を伸ばして下腹に力を入れます。そり過ぎていませんか?猫背になっていませんか?片方に重心がかかっていませんか?
歩く姿勢
膝を伸ばし、かかとから地面につける事。ヒールの高い靴も腰に負担がかかります。
座る姿勢
腰と膝がほぼ直角に曲がり、足の裏全体が床につくような椅子の高さにします。長時間におよぶ時には、極力その場でできる屈伸などの軽い運動を心がけましょう。
物を持つ時
床に膝をつけるなど、できるだけ低い姿勢で腹筋に力を入れ物が体に密着するように膝を曲げて持ち上げるようにしましょう。
痛みのある時の寝かた
横向きでやや前かがみの姿勢が一番良いと言われています。仰向きで寝る場合には、膝の下に枕を入れるなどの工夫が必要です。

イラスト疲れをためず、日頃からストレッチや筋肉強化訓練を行い、腹筋と背筋のバランスを整えるよう心がけます。また、帰宅後はゆっくりと入浴(半身浴)で体の芯から温め血行促進、十分な睡眠をとる事も大切です。 

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