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お薬研究所 : 2011年1月号-#1 [2011.1.4up]

お薬研究所では「薬局でのこんな相談」や「病気の話」など、皆さまの健康に役立つ情報を掲載しております。
  » 病気の話「骨粗しょう症」
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病気の話「骨粗しょう症」

どんな病気

骨粗しょう症とは、骨量の減少や骨の微細構造の劣化により骨の脆弱化が進み骨折のリスクが高まる病気です。健康な骨は、網目状構造の“骨梁”がびっしりと詰まっていますが、骨粗しょう症の人の骨は、この骨梁が細くなったり折れてしまっている為にスカスカの骨になっています。したがって、ちょっとした事で骨折したり症状が進むと自分の体重により潰れてしまう事すらあります。これを圧迫骨折と言い、身長が縮んだり背骨が曲がったり痛みを伴います。健康な骨は、網目状構造の“骨梁”がびっしりと詰まっていますが、骨粗しょう症の人の骨は、この骨梁が細くなったり折れてしまっている為にスカスカの骨になっています全国で骨粗しょう症の患者さんはおよそ1千万人以上といわれており、高齢の女性に多いのが特徴です。 骨密度(単位容積あたりのミネラル量)は、男性で20~40代、女性で20~30代でピークに達し40代までは、ほぼ一定ですが50代を境に急激に減少します。骨の構成成分であるカルシウムは腸から吸収され骨に取り込まれますが、年を取るとこの吸収が悪くなってしまう事が骨量の減少に関係しているらしいのです。また、女性ホルモンであるエストロゲンは、骨の新陳代謝に関与しており、骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する働きがあります。したがって、閉経後エストロゲンが減少する事で急激にカルシウムの溶け出すスピードが上昇し、骨が脆くなってしますのです。
さらに、成長期のダイエットも要因の1つ。 体内のカルシウムの98%は、骨組織の中にありますが残りの2%は血液中にあり、細胞の浸透圧の調整や神経伝達、酵素を活性化するなどの重要な役割も持っています。したがってダイエットにより十分な栄養が摂れない状態では骨から血液にカルシウムを補充しなければならず、骨中のカルシウムは減ってしまいます。しっかりとした丈夫な骨を作る大切な時期にスカスカの骨となってしまっては、骨粗しょう症になる危険も倍増するはずです。骨は“生きている”のです
また、甲状腺機能亢進症や関節リウマチ、糖尿病、胃切除等の疾患に起因する場合やステロイドの長期服用等の薬剤に起因する事もあります。これを続発性骨粗しょう症とし、加齢に伴う症状とは、分けて考えられています。これらの、原因がはっきりしている場合には服薬を開始し症状が進むのを抑える必要があります。

骨の新陳代謝って何?

骨は見た目には動きのない組織に思えますが、実は生涯活動しています。骨休止→骨吸収→骨形成→骨休止というサイクルで新陳代謝を繰り返し、骨は“生きている”のです。 骨休止→骨吸収→骨形成→骨休止というサイクルで新陳代謝を繰り返しています
休止している骨に破骨細胞が近づくと骨からカルシウムが失われはじめ、次に骨芽細胞が近づくと骨が修復をはじめるというパターンで循環しています。この循環のバランスが崩れる事によって骨粗しょう症が生じます。

骨密度って測れるの?

  • DXA法 → (エネルギーの低い2種類のX線を使用して測定、全身のほとんどの骨を測定できる)
  • 超音波法 → (かかとやすねの骨に超音波をあてて測定)
  • MD法 → (X線を使用し、手の甲と厚さの異なるアルミニウム版を同時に撮影し骨とアルミニウムの濃度を比較する事で判定する)
  • 血液尿検査(骨代謝マーカー値により、骨の新陳代謝の速度を調べる)イラスト 骨粗しょう症

上記のような方法で骨密度の測定は可能です。骨密度の正常値は成人(20~40歳)の平均値をもとにしており、以下のように判断されます。

  • 平均値の80%以上・・・・・・正常
  • 平均値の70~80%・・・・・骨量減少(要注意)
  • 平均値の70%以下・・・・・骨粗しょう症

どんな症状

骨粗しょう症は、自覚症状のない病気です。知らず知らずに骨密度が減少しスカスカになった骨が骨折し痛み出します。骨折の好発部位としては、上腕骨・橈骨・椎骨・大腿骨です。
(1) 身長が縮んだ
(2) 背骨が曲がった
(3) 腰痛や背骨折の好発部位としては、上腕骨・橈骨・椎骨・大腿骨です中の痛みで動作が鈍った
(4) レントゲン検査でも椎間板や脊柱管に異常が見られない
(5) お腹がすぐにいっぱいになる
(6) 外出が辛い
(7) 息切れしやすい
上記のような症状があったら、骨密度検査を受け早めに治療を開始する事で骨折を回避できます。
高齢者の骨折は寝たきりにつながる事もあります。“年だからしかたがない”ではなく適切な治療で進行を食い止めましょう。また、簡単にできるチェック方法としては、身長を測る事です。4cm以上縮んだ場合には、骨粗しょう症の可能性があるといわれています。

どんな治療

薬の服用骨粗しょう症は、骨の生活習慣病といわれ食事や運動などの影響を強くうけますので生活の見直しは大切ですが、骨粗しょう症と診断されたら薬の服用が治療の中心です。すぐに効果が出る事は期待できませんが、続ける事で進行を抑えます。主な治療薬としては・・・・・

(1) 女性ホルモン(エストロゲン)
減少したホルモンを補充します。女性ホルモンは、骨吸収を抑制し骨形成を促進する作用を合わせ持っています。しかし、長期間の服用で子宮内膜癌発症の危険性が高まるという指摘もあり、使用に消極的は医師もいます。 エビスタは、女性ホルモン骨格をもたないが骨や脂質に対してはエストロゲン様作用を持ち、子宮内膜に対してはエストロゲンと逆の作用を発現するため発癌の心配なく使用できます。
(2) カルシトニン(甲状腺から分泌されるホルモン)
破骨細胞に作用し骨吸収を抑制し、骨形成作用もあるといわれています。
(3) カルシウム製剤
カルシウムを摂取する事で血液中のカルシウム濃度を上昇させて骨吸収を抑制します。しかし、閉経後の骨粗鬆症に単独で使用してもあまり効果的ではありません。
(4) ビタミンD3
腸からのカルシウム吸収を高める。
(5) ビタミンK
骨形成を促進する作用があり、骨吸収を抑制する薬剤と併用すると効果的です。
(6) ビスホスホネート製剤
強力な骨吸収抑性作用を持っています。この薬剤は、腸からの吸収がわずかで食事により吸収が阻害されます。したがって、食事の影響を回避するため起床時に十分な水で服用し服用後は横にならないなどの注意が必要です。

生活アドバイス

骨の生活習慣病である骨粗鬆症、日々の食事が非常に大切です。まずは、骨の原料となるカルシウム。厚生労働省は日本人のカルシウム必要量を1日700mgと定めていますが、骨粗鬆症を予防するためには1日800mgは必要といわれています。
しかし、実際にはおよそ550mgしか摂取できておらず800mgのカルシウムを食事から摂るのは以外と難しいようです。
また、カルシウム含有食品といってもその吸収率には違いがあり(牛乳・乳製品>大豆などの豆製品>小魚>野菜・海藻)効率良く摂るためには、やはり乳製品が良いようです。
次に、カルシウムの吸収を助けるビタミンD。食品にも含まれますが、日光浴をすることにより皮下にも作られます。皮下にある“プロビタミンD”が紫外線の作用でビタミンDになるのです。肝臓や腎臓で活性型のビタミンDとなり、カルシウムの吸収を促進します。食品では、主に魚介類や干しシイタケに多く含まれています。
日光浴といっても、太陽光を浴びながら散歩する程度で十分効果があります。
さらに、高齢になると食の好みが変わったり、小食になったりでたんぱく質の摂取も減少しがちです。たんぱく質も骨を作る上で重要な栄養素です。バランスのとれた食事メニューを心がけましょう。また、塩分の摂りすぎは尿へのカルシウムの排泄を促します、塩分控えめも大切です。
運動不足は骨密度を低下させる原因になります。骨は機械的な刺激が加わると骨形成が盛んになるのです。逆に、無重力状態ではたちまち骨は減ってしまうのです。
宇宙飛行士が帰還した際に骨密度が低下してしまった事が知られています。したがって、体重をかける運動が効果的です。特別な事をしなくても、階段の上り下りやウォーキング、軽いジョギング、太極拳などもよいでしょう。
いずれにしても、毎日の食生活は重要です。バランスのとれたメニューと適度な運動を取り入れ元気な骨を維持しましょう!

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