お薬研究所 < ホーム

お薬研究所 2010年7月号

お薬研究所では「薬局でのこんな相談」や「病気の話」など、皆さまの健康に役立つ情報を掲載しております。

  » 病気の話「脂質異常症について」

病気の話「脂質異常症について」

1. 脂質異常症

脂質異常症 食生活の変化に伴い、脂質異常症と診断されたりその予備軍の人が増えています。発症を未然に防ぐ為に早くから生活習慣を改善する事が大切です。 そこで、メタボリックシンドロームに注目した特定健康診断や特定保健指導が行なわれるようになりました。 男性の30代、女性の50代では2人に1人の割合で脂質異常症予備軍と言われています。女性の方がなりにくいのは、女性ホルモンであるエストロゲンが血液中の脂質を正常に保つ働きを持っている為で閉経後は発症のリスクが高まります。また、自覚症状がなく突然症状を引き起こす事から”サイレントキラー”と呼ばれています。

2. どんな病気

脂質異常症とは、血液中の脂質が過剰になった状態を言います。 通常、脂質は肝臓で作られたり食事から取り込まれたりして体内で一定の量になるように調節されています。脂質異常症とはどんな病気しかし、体の中のコレステロールの流れや摂取する量が過剰になると、動脈硬化を引き起こし血管内に傷を作りやすくなり、それが引き金となり虚血性心疾患や脳血管障害などの発症率を高める事が明らかになっています。
血液中の脂質には、コレステロール・中性脂肪・リン脂質・遊離脂肪酸の4種類があります。”脂肪”というと体にとって好ましくない物と思われがちですが、それぞれが重要な働きを持っています。

△コレステロール・・・ 細胞膜の材料として体を作ったり、ホルモンや胆汁酸の材料となる。
△中性脂肪・・・・ 脂肪細胞に蓄えられ必要に応じて脂肪酸となりエネルギー源となる。
△リン脂質・・・・・ 細胞膜の構成成分で水に溶けにくい物質をなじませる働きがあり胆汁脂肪酸・中性脂肪を溶かして組織に運ぶ。
△遊離脂肪酸・・・・ エネルギー源となる。

体内での脂質の流れ
体内での脂質の流れ食事によって摂取された脂質は、小腸で吸収されます。そのままの状態では血液に溶け込むことが出来ないため、リポ蛋白という物質となり血液にのり肝臓に運ばれます。肝臓ではコレステロールと中性脂肪が作られます。中性脂肪は遊離脂肪酸として血液に入り脂肪組織で中性脂肪として蓄えられ、コレステロールはLDLとして末梢の組織に運ばれ細胞膜やホルモン等の合成に使用されます。組織で余ったコレステロールはHDLとして肝臓に戻ってくるという循環を繰り返しています。肝臓に戻ってきたコレステロールの一部は胆汁さんとして十二指腸に排泄されますが、大部分は腸で再吸収され肝臓に戻ってきます。
善玉コレステロールと悪玉コレステロール善玉と悪玉コレステロールの違いは何処にあるのでしょうか?
LDLコレステロールは、組織に運ばれる途中のコレステロールを言います。このLDLコレステロールが多すぎると血管壁に取り込まれ動脈硬化の原因になる事から”悪玉コレステロール”と呼ばれています。 HDLコレステロールは、組織で余ったコレステロールを血管から引き抜いて肝臓に戻す働きをしている事から”善玉コレステロール”と呼ばれているのです。したがって、HDLコレステロールが高いと動脈硬化になりにくいと言えます。 このようなサイクルの中で、コレステロールの取りすぎやHDLによる回収、胆汁さんとしての排泄、腸からの再吸収などのシステムに支障をきたす事で発症するのです。しかし、いづれにしても自覚症状なく病気は進んでいるので血液検査等で自分の体の状態を把握することはとても大切です。

3. 診断と分類

診断は、原則として空腹時の静脈血中の血清脂質を測定します。
総コレステロール、中性脂肪、HDL、LDLの各値を測定し判断します。
今までは、総コレステロール220mg/dl以上を脂質異常症と診断されてきましたが、総コレステロール値とはリポ蛋白に含まれるすべてのコレステロールを合算した値であるため、現在ではむしろLDL値や中性脂肪値に注目して判断されています。

<診断>中性脂肪150mg/dl以上HDLコレステロール40mg/dl未満LDLコレステロール140mg/dl以上

上記、中性脂肪・LDL・HDLの3つの検査値のいずれかが基準値に達していると脂質異常症と診断されます。しかし、服薬を開始するか否かは他の疾患による影響を受けていないか等を調べた上で判断されます。

<分類>

(1) 原発性脂質異常症
高血圧原因が限定できないタイプの脂質異常症で、多くの場合生活習慣が影響して引き起こされていると言われています。このタイプの中に家族性脂質異常症が含まれます。
これは遺伝的要素が強く生活習慣の影響はほとんどないといわれています。このタイプの人には、もともと肝臓にコレステロールを引き込む受容体が少なく血液中のコレステロールが多くなり発症するようです。日本人の場合500人に1人くらいの割合でこのタイプであると言われています。
(2) 続発性脂質異常症
他の疾患や薬が原因となって発症するタイプの脂質異常です。この場合は、原因となっている疾患の治療が第一優先です。場合によっては、薬を変更したりします。
原因疾患としては⇒甲状腺機能降下症・ネフローゼ症候群・原発性胆汁性肝硬変・糖尿病等薬剤性としては⇒利尿剤・ステロイド・経口避妊薬等

4. どんな治療

治療薬 脂質異常症と診断されてもすぐに服薬を開始するわけではありません。まずは、食事療法や運動療法を併用し3~6ヶ月様子を見ます。 それでも検査値に改善が見られなければ、いよいよ服薬です。 脂質異常症の治療は、LDLコレステロールや中性脂肪を低下させHDLコレステロールを上昇させる事により動脈硬化を予防する事を目標とします。 主な治療薬としては、スタチン系薬剤・フィプラート・陰イオン交換樹脂・ニコチン酸・エゼニチブ・イコサベント酸エチル・植物捨てロール等があります。

(1) スタチン系薬剤
肝臓でのコレステロール合成の過程で使われる酵素を阻害するため、肝臓のコレステロールの貯蔵量が減少します。それに伴い肝臓の細胞膜にあるLDL受容体が増え血液中のLDLを取り込みます。
(2) フィプラート系薬剤
肝臓において脂肪酸の合成を抑制したり、脂肪酸の酸化を促進する事で中性脂肪が作られるのを抑えます。また、胆汁酸としてコレステロールを排泄させる働きもあると言われています。
(3) 陰イオン交換樹脂
腸管にて肝臓から排泄された胆汁さんと結合して、小腸での再吸収を抑制し糞便中に排泄させる事で結果的に肝臓のコレステロール貯蔵量が減少します。
(4) エゼニチブ
小腸において食事や胆汁中のコレステロールの吸収を選択的に抑制し、肝腸循環を介し約80%が糞便中に排泄されます。
(5) ニコチン酸
遊離脂肪酸の動因を抑え、肝臓でのVLDLの合成を抑制します。中性脂肪を低下させるとともにコレステロールの排泄も促します。
血液検査値よりどのタイプの薬剤が適切なのか判断され薬が決まります。指示通りに毎日服用する事が大切です。

5. 生活習慣を見直しましょう

コレステロールは、食事から摂取する量よりも体内で合成される量の方が2倍以上も多いのですが、摂取エネルギーが過剰になると肝臓でのコレステロールの産生が盛んになります。したがって、コレステロール含有食品を控えるだけでは十分とは言えないのです。一般的には1日の摂取カロリーは20~30Kcal/kgと言われており、50kgの人であれば1,000Kcal~1,500Kcalが適当と考えられます。
コレステロールの多い食品と有酸素運動右の図にあるようなコレステロールを多く含む食品は控えめに、肉類中心から魚類中心のメニューを心がけます。また、食物センイはコレステロールの排泄を促します。さつまいも・海藻類・きのこ類・こんにゃく・ごぼう等。蛋白源は、豆類から摂るようにしましょう。さらに、中性脂肪が多い人は砂糖やお菓子・清涼飲料水・アルコールなどの糖質を控える事も忘れずに!偏りのない栄養バランスの良いメニューで1日3回きちんと食べる事も大切です。
また、脂質異常症と診断されたら是非禁煙を!
タバコは、HDLコレステロールを低下させ、LDLコレステロールの酸化を促進します。血管を収縮させて血流を悪くし動脈硬化を進める事がわかっています。
次に運動です。脂肪を燃焼させるには、ウォーキング・水中歩行・サイクリングなどの有酸素運動がお勧めです。
いずれにしても、無理のない程度から取り入れ毎日の習慣とする事が大切です。