お薬研究所 < ホーム

お薬研究所 : 2011年3月号-#1 [2011.3.8up]

お薬研究所では「薬局でのこんな相談」や「病気の話」など、皆さまの健康に役立つ情報を掲載しております。
  » 花粉症
     ├ 1. 花粉症とは?
     ├ 2. 花粉症の時期
     ├ 3. 花粉症のメカニズム
     ├ 4. 治療について
     ├ 5. 治療開始の時期は?
     └ 6. 花粉症治療の目的
これまでの記事(直近3件)
  » 2011.02.24 お薬研究所:2011年02月号-#3 体を温める野菜
  » 2011.02.16 お薬研究所:2011年02月号-#2 こんな相談「坐剤の使用方法」
  » 2011.02.08 お薬研究所:2011年02月号-#1 病気の話「インフルエンザ」

病気の話「花粉症」

花粉症とは?

現在日本人の25%(4人に1人)が花粉症と言われています。
花粉症とはスギやヒノキなどの植物の花粉が原因となって、くしゃみ・鼻水・目のかゆみなどのアレルギー症状を起こす病気です。
症状は原因となる花粉がある時期だけに出ることから、季節性アレルギー性鼻炎とも言います。
症状はくしゃみ・鼻水・鼻づまりの鼻の三大症状以外に、目の症状として、かゆみ・充血・涙目といった症状を伴うことが多く、そのほかにのどのかゆみ、皮膚のかゆみ、下痢などの胃腸障害、倦怠感や発熱の症状が出ることもあります。
原因となる花粉はスギ、ヒノキを始め、カモガヤ、オオアワガエリ、ブタクサ、白樺など60種類以上の花粉が原因となるといわれています。

花粉症の時期

花粉症関東での花粉の飛散時期
・スギ   2月~4月末くらい
・ヒノキ  3月~5月末くらい
・ブタクサ 8月~10月くらい
・イネ科  4月~10月くらい
・ヨモギ  9月くらい
花粉症の原因の多くはスギ花粉と言われ約8割を占めますが、そのほかの花粉もほぼ1年を通じて様々な花粉が飛散しています。
そのため毎年同じ時期に、同じ症状が出るようであれば病院で調べてもらうとよいかもしれません。

花粉症のメカニズム

花粉症の症状は、花粉が粘膜に付着することで体が異物として排除するか? そのままほおっておくか?判断することで発症するか分かれてきます。
体が異物と判断した時、体の中では次のような段階を踏みます。

  1. 花粉の中に含まれる抗原物質(アレルゲン)が鼻腔粘膜を通過
  2. 浸透したアレルゲンは異物を認識するマクロファージに取り込まれます
  3. 取り込んだマクロファージはT細胞を介して抗体を作成するB細胞へ情報を伝達します。
  4. B細胞で花粉(アレルゲン)に対する抗体(IgE抗体)が作成されますこの流れを感作といい、次回同じ抗原となる花粉が入ってきた時に、アレルギー症状が現れるようになり花粉症が発症することになります。

花粉症の方(感作した方)のIgE抗体は、アレルギー発症にかかわる肥満細胞に結合している状態です。
アレルゲンとなる花粉が入ってくると、IgE抗体に結合し肥満細胞が活性化され、ヒスタミンやロイトコリエンなどの化学伝達物質が放出されます。
これらの化学伝達物質が粘膜上で刺激して鼻であればくしゃみ・鼻水・鼻閉、 目であればかゆみ・充血などの症状を引き起こします。(即時相反応)
花粉を続けて浴びることで反応を繰り返し、好酸球が増殖し鼻腔粘膜の障害が生じて、過敏症が亢進し症状が蔓延し悪化していきます。(遅発相反応)

治療について

治療には症状を緩和する対処療法と根本的に治す根治療法の2つに分かれます。
通常強い症状が出ているときは対処療法が先決となります。

1.対症療法

対症療法ではあくまでも症状の緩和・改善を目的とし、患者さんのQOL(生活の質)の改善するもので、完治するものではありません。しかし、シーズン中しっかり治療することで、症状を軽くしたりまた、ほとんど症状を感じない程度に抑えることができます。
花粉症に使用される薬剤には様々な作用をもった薬剤が使用されます。
よく「アレルギーの薬です。」と説明されることが多いかと思います。
そのため、こんなに薬が必要なの?と思ったこともあるかと思いますが、アレルギー発症のメカニズムに合わせて、複数の薬剤を使用することで症状を抑えています。
そのため用法を守って使用することが大切です。

»主な薬剤

(1) 抗ヒスタミン薬
薬剤放出されたヒスタミンが受容体(レセプター)に作用しないようにすることで、くしゃみ・鼻水などの症状を抑えます。
効果の発現は比較的早くみられます。特に症状が出ているときにメインとして使用する薬剤の一つです。
その一方、唾液のスイッチを抑えることから口の渇き(口渇)を感じたり、眠気を伴うことがあります。また、一部の疾患では使用できないこともあるので、注意が必要です。
(2) 化学伝達物質(ケミカルメディエーター)遊離抑制薬
肥満細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質の遊離を抑制します。 今出ている症状を止めるのではなく、続けて使用することでアレルギー症状が出にくくする薬剤です。
比較的副作用と言われる口渇や眠気は少ないものが多く、シーズン中長く使いやすい薬剤です。
効果が出るまでに2週間ほどかかるため、前もって使用することが大切です。
(3) 抗ロイコトリエン薬
粘膜の血流の改善などにより、うっ血を改善し粘膜の腫れを改善します。
特に鼻閉を伴う時に使用されます。
効果の発現までに1~2週間かかることもあります。
(4) 点眼剤
点眼剤症状により1~2剤の点眼を使用することで、症状の改善及び予防となるため、シーズン中は続けて使用することが大切です。
症状がひどい時は、症状に合わせてステロイドを使用することもあります。
ステロイドの点眼では眼圧が上昇することもあるので、医師の指示に従って使用しましょう。
点眼剤は局所への使用の為、内服薬に比べて比較的副作用は少ないとされていますが、コンタクトの使用などによりしっかり効果が出なかったり、またかゆみが強くなったり、コンタクトの着色など思わぬことが起きることもあります。点眼薬の注意事項を医師、薬剤師に確認しましょう。
(5) 点鼻薬
点鼻薬もアレルギーを抑えるタイプと、鼻閉を改善するステロイドのタイプがあります。
点鼻薬も症状に合わせて選択されますので、適切な使用が大切です。

»手術療法

強い鼻閉を伴う場合にレーザーにて患部を焼いて腫れを抑えます。
患部によっては数回の治療が必要であったり、鼻炎症状が強い時は効果が出づらいこともあるそうです。
できればシーズン前に治療を終わらせておくことがよいようです。
あくまでも症状を少なくする処置であり、アレルギー体質が改善するものではありません。
耳鼻科の専門の先生とよく相談してみましょう。

2.根本療法

»減感作療法

花粉症の原因となる抗原を低濃度から始め徐々に濃度を高くして体内に取り入れることで、抗原に対する反応を弱めていく方法です。
対処療法と合わせて行い、シーズンの前から開始して2~3年と長い期間をかけて行っていきます。
現在唯一アレルギーを治す可能性があるといわれていますが、抗体を体内に取り入れることから、時に強いアレルギー反応が出てしまうこともあるため、医師とよく相談が必要です。また、限られた治療施設に限られるようです。
現在注射での摂取ですが、口腔からの摂取などが研究されているようです。

治療開始の時期は?

毎年強い症状が出る患者さんには、初期治療が有効です。
初期治療とは花粉が飛散し症状が少しでも出たら、我慢せずに薬剤による治療を開始することで、重症化を抑えることができます。
イラストただし一度症状が出ると患部ではヒスタミンが遊離している状態です。そのため粘膜も腫れてしまい荒れた状態となってしまいます。
薬を開始しても抗ヒスタミン薬である程度症状は抑えられますが、化学伝達物質遊離抑制薬の効果が出るまでには2週間くらい時間がかかってしまうため、その間に花粉を吸ってしまうことで、さらに症状がひどくなっていってしまいます。
一度粘膜が荒れてしまうとなかなか症状が落ち着きません。
できれば粘膜が荒れる前に治療を開始すること、症状が出る1ヵ月くらい前から治療を開始することで、花粉の飛ぶ時期をより楽に過ごすことが出来ます。

花粉症治療の目的

日中の眠気や集中力の低下につながることも珍しくありません花粉症の症状を楽にするのが最大の目的ですが、それと同時に患者さんのQOLを改善することが大切です。
日中のつらい症状と共に、鼻閉による睡眠障害も多くみられます。そのため日中の眠気や集中力の低下につながることも珍しくありません。
それだけではなく鼻閉は寝ている間に口呼吸となることから、のどが乾燥し粘膜を損傷しやすくなり、風邪などひきやすくなります。
鼻閉は寝ている間に口呼吸となることから、のどが乾燥し粘膜を損傷しやすくなり、風邪などひきやすくなります花粉症は一度発症してしまうと、長く付き合わなければなりません。
薬剤はいくつかのタイプを使い分けますが、患者さんと薬剤の相性もあります。
毎年繰り返すものですから、自分に合った薬剤みつけて、自分の生活のスタイルに合った使用を確立することが大切です。
 

飛鳥薬局:採用情報