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お薬研究所 : 2011年7月号 [2011.7.22up]

お薬研究所では「薬局でのこんな相談」や「病気の話」など、皆さまの健康に役立つ情報を掲載しております。
  » 熱中症 -2-
     ├ 1. 熱中症とは?
     ├ 2. 熱中症のメカニズム
     ├ 3. 熱中症の症状は?
     ├ 4. 熱中症の手当てと応急処置
     ├ 5. 熱中症の予防
     └ 6. 熱中症になりやすい人は?
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熱中症 -2-

熱中症とは?

熱中症

体温のコントロールを失い、体の機能が低下することによるさまざまな症状の総称です。
放置したり手当てが遅れると死に至るケースも少なくありません。

熱中症のメカニズム

人はもともと、自身で熱を作りその熱を放出することで、一定の体温を維持して生活しています。これは体の各機能が36~37℃位でスムーズに働いており、平熱を保とうとする体の基本的な機能です。
人の体は発熱が0になることはありません。起きて活動や運動をすることで発熱量は増え、寝ている時は平熱を保つ範囲内で必要な発熱を続けています。
逆に体からの放熱は、皮膚を通して体外に熱が移動することで自然に起きています。
体温が上がり37℃を超えると皮膚の血管が拡がり、多くの血液を空気で冷やすことで体温を下げる機能があります。
(よく風邪で熱が出た時に顔が赤くなるのも、皮膚の血管が拡がり、血流量が増えているために赤く見えています)
また、汗をかくことで皮膚の周りで水分が気化し熱を奪うこと(気化熱)で体温を下げる機能があります。
この発熱と放熱のバランスが取れている時体温は平熱に保たれていますが、気温や湿度が高くなるなどにより、バランスが崩れて体内に熱が溜まってしまいます。
どの様な時にバランスが崩れるのでしょうか?

気温が高い時
熱は温度差の違うものがあると、熱の高いものは低くなり、熱の低いものは高くなり、それぞれ同じ温度になろうとします。(平衡状態) そのため気温が高いと、皮膚からの放熱は難しくなり、むしろ体内の温度が上がり易くなります。そのため放熱は汗をかくことでの気化熱のみに頼ることになります。
湿度が高い時
汗の水分は空気中に気体となって、体表面から熱を取っていきますが、湿度が高い時(75%位)は、水分が気化しにくく汗による放熱が難しくなります。
汗で体が濡れても、もともと体内にある血液が汗となっていることから汗の温度は体温と同じものです。そのため汗をかいただけでは体温を下げることができません。
たくさん汗をかいた時など
高温多湿以外でも、激しい運動や労働によってたくさんの熱を作り、たくさん汗をかくことで体内の水分量が減り、次第に発汗量が少なくなり放熱量が減っていくことで、体内に熱が蓄積されてしまいます。
このように放熱機能が追い付かなくなり体内に熱が溜まったり、多くの汗をかくことで水分不足や体内の電解質のバランスを崩し、さまざまな症状が出てきます。

熱中症の症状は?

症状により4つに分類出来ます。軽度なものから重度なものまでありますが、軽度なものでも放置すれば重度な症状に進行したり、複数の症状が重なることで急激に悪化することもあるため、異変に気が付いたら無理をせず休憩や処置が必要です。

  原因と症状
熱失神 高温や直射日光などにより、皮膚の血管が広がることで血圧が低下し眩暈や一時的な失神などの症状が現れる。 運動中よりも運動後などにおきることが多く、呼吸や脈が速く、一過性の脳の酸欠により目の前が暗くなったり、ボーっとしたり、気持ち悪くなったり数秒程度の意識消失が見られる。
熱性けいれん 大量に汗をかくことで水分と共に塩分も体外に排泄される。その時に水分のみの補給だけで済ませてしまうと、体内の塩分や電解質が不足し、筋肉の伸縮コントロールを失い強い痛みを伴った筋肉のけいれんが現れる。特に足や腹筋に現れやすい。
熱疲労 多汗による水分と電解質不足による、脱水症状の状態で、眩暈や吐き気、頭痛、脱力感といった症状がみられる。熱射病の一歩手前の段階で、体温は平熱あるいは少し高いくらい、まだ汗をかけている。
熱射病 脱水症状の状態からさらに体温調節の機能が異常をきたし、処置が遅れると死に至ることもあり非常に危険な状態。 皮膚は熱を持って赤みがあり、汗をかくことが出来ず、体温も上昇し40度以上になることが多い。 さまざまな機能消失により眩暈、吐き気、頭痛のほか、意識障害(反応の低下、錯乱、言語異常、意識消失など)、全身の痙攣といった救急の処置が必要。

熱中症の手当てと応急処置

熱中症の手当ての基本は休息、冷却、水分補給の3つです。

熱失神や熱疲労
クーラーの効いた部屋や風通しのよい日陰などの涼しい場所へ移動し横になり安静にして衣類を緩めましょう。水分を取ることで回復します。水分は電解質を含んだものが望ましいです。手足を高くし末梢から中心に向かってマッサージをするのも有効です。
ただし、吐き気やおう吐により水分をとれない時は病院へ行き適切な処置を受けましょう。
熱けいれん
多汗により多くの電解質を失っているため、水ではなく生理食塩水(0.9%:水100mLに対して塩0.9g溶かしたもの)、スポーツ飲料や脱水症状時の補給水(OS-1)などをとるようにしましょう。
水だけの補給は体内の塩分濃度がさらに低くなり筋肉のけいれんが起きやすくなります。
熱射病
非常に危険な状態です。救急車の手配とともに体温を下げて意識回復をさせる必要があります。
救急車が到着するまでに出来ることは?
体温を下げるために冷却をします。体に水をかけたり濡れタオルをかけて仰ぎます。
仰ぐものは扇風機でも団扇でも段ボールでもかまいません。とにかく濡らして仰ぐことが大切です。また、アイスパックなどがあれば、首・脇の下・足の付け根にあてます。太い血管があるため冷却が効率よく行えます。意識が戻り本人が不快に思うくらいまでアイシングしましょう。
循環が悪い時は足を高くしマッサージを行います。
手当や処置は類似するものも多くありますが、実際には熱けいれん以外は判断が難しいことも多くあります。そのため意識があっても、反応が鈍かったり、言語が少しでもおかしいなど、気になるときは重症と考えて処置し対応しましょう。

熱中症の予防

熱中症の発生は、気温・湿度が高ければ高いほど起きやすくさらに風の有無や日差しなどが関わっています。さらにそれらの条件下での運動や労働などが強いものになればなるほど発熱量も増え熱中症の発生率も高くなります。

WBGT
(℃)
湿球温
(℃)
乾球温
(℃)
危険度
31 27 35 原則
運動禁止
WBGT31℃以上では体温より気温が高いことから熱放出がうまくできません。特別な場合を除いて運動は避けましょう。
28 24 31 厳重警戒 熱中症になる危険性が非常に高いため、激しい運動や持久走は避けましょう。運動する場合は計画的な休憩と水分などを取りましょう
25 21 28 警戒 熱中症の危険が高いため、積極的に休憩をとり、水分の補給をしましょう。激しい運動をする時は30分ごとに休憩をとりましょう
21 18 24 注意 熱中症になる可能性が出てきます。熱中症の兆候に注意しながら運動の合間に休憩や水分をとりましょう。
  ほぼ安全 通常は危険は少ないが持久走などは注意が必要。

WBGTとは湿球黒球温度のことで、日差しのある野外と日差しのない室内とをわけて次の方法で求めることが出来ます。
室外の場合:WBGT=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度
室内の場合:WBGT=0.7×湿球温度+0.3×黒球温度
上記の計算や表はあくまでも目安であり、温度や湿度は目に見えないため変化に気が付かないこともあります。そのため、運動時の体調の変化があれば休憩と水分を取るようにしましょう。

急な暑さに注意
人の体はもともと体温を一定に保とうする機能が備わっています。そのため外気の変化に応じて暑さや寒さに対応しようとします。それでもその対応には2週間くらいかけて順応していくため、急激に気温が上昇すると対応が出来ないことから、熱中症になり易い時期と言えます。特に梅雨明けの急激な気温の上昇は湿度も高いため注意が必要です。
汗をかいたら
汗には水分のほかに塩分が含まれます。継続して汗をかくことで水分と塩分が失われていきます。補給しないと脱水症状になり、熱中症の症状が出始めます。
また、人は2%の水分を失うと運動機能の低下が出たり、塩分が不足すると疲労回復能力が低下します。
熱けいれんの発症や運動機能低下によるけがにつながりかねません。
そのため汗をかいたら水分を取る、また一緒に塩分を取るためにも、0.1~0.2%位の塩分を含むものを選ぶようにしましょう。

熱中症になりやすい人は?

  • 体調不良の時は特に温度調節機能が低下していることがあります。疲れがたまっている時、風邪、下痢やおう吐の症状、寝不足の時は運動は避けましょう。
    体力のない人、疲れやすい人
  • 暑さに弱く、暑いと比較的すぐに気持ち悪くなったり眩暈が出る人
  • 熱中症を起こしたことがある人
  • 持久力がない人
    循環機能が低いことが多く、リスクが高いことが多い。
  • 肥満の人
    汗を沢山かくイメージですが、その分電解質の不足や体内温度の上昇が起きやすいことからリスクが高くなる。
  • 高齢者
    体温調節機能の低下やもともと若い方に比べて体内の水分量が低いことから、リスクが高くなる。
  •  幼児・小児
    汗をかく機能が大人と比べて未発達の為リスクが高くなる。
    夏かぜで熱があるときに布団を重ねてかけることで汗がかけずに熱がこもり脱水や熱中症になりやすい。

◎近年では室外や運動中の熱中症以外に車内での死亡事故や、室内での死亡などのニュースも聞かれる機会が多いように、リスクの高い方は室内でも十分に対策と予防が必要となります。 今年は平年より暑く、関東エリアでは特に節電を実施する機会が多くなります。
今までのように激しい運動や室外での労働は注意が必要なことはもちろん、室内でも危険があるため、土建業などで外に慣れている方は危険性を十分に理解されているかと思いますが、営業の方などは今までは外周りと営業先や支店など室内でのクールスポットで休息をとることが出来ましたが、今年は節電の影響で十分に体を冷やすことが出来ないことも考えられます。汗をかいたら水分を取るようにしましょう。