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お薬研究所 : 2011年8月号 [2011.8.26up]

お薬研究所では「薬局でのこんな相談」や「病気の話」など、皆さまの健康に役立つ情報を掲載しております。
  » 病気の話「鉄欠乏性貧血」
     ├ 1. 貧血とは
     ├ 2. 症状
     ├ 3. 原因
     ├ 4. 治療と対策
     └ 5. その他の貧血
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病気の話「鉄欠乏性貧血」

貧血とは

貧血

貧血とは血液中の赤血球が何らかの原因により減少した状態で、それによって全身に酸素を送ることが出来なくなり、酸欠状態になった部位によってさまざまな症状が出ることを言います。
貧血は原因によってたくさんの種類があります。どの種類の貧血でも基本として現れる症状は同じものです。
その中でも7割を占めるのは鉄欠乏性貧血で、一般的に貧血といわれているものです。

症状

貧血の症状は全身症状から部分的な症状と多岐にわたります。 立ちくらみ、めまい、動悸、息切れ、疲れやすいまたは疲れがとれないなどの症状があります。軽い症状ではあまり気にならないこともありますが、症状が重くなると生活に支障をきたすこともあるため、軽んじることはできません。
その他身体的には爪の中心がくぼむ(スプーンネイル)、顔面蒼白など現れるものもあります。下まぶたの裏が赤みがない(血の気がない)といったものも現れることから、これらのいくつかが当てはまるようであれば内科医に診てもらうことをお勧めします。

原因

イラスト Fe(鉄分)

赤血球は鉄を含むヘモグロビンというタンパク質から構成されています。
何らかの原因により、鉄が不足することで赤血球が減少して起こります。

■ 鉄が不足する原因

食事のバランスが悪い、偏食、食事を減らすダイエットなどにより食事に含まれる鉄量の減少や吸収に必要なビタミンなどが不足することで鉄が不足します。また、鉄は胃で消化され小腸で吸収されますが、胃の摘出や疾患などにより胃酸が不足することで吸収される量が減少してしまいます。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍、大腸がん、出血を伴う痔など慢性的な出血があることでも鉄が不足する原因となります。
女性では月あたりの生理による出血は約40mLと言われ、鉄としては20mg失うことになります。
鉄は体内で合成できないことから食事で摂取するしかありません。成人で必要とされる鉄量は1日あたり1mgとされていますが、消化管からの鉄の吸収率は10%とされることから、10mgとる必要があります。特に生理のある女性や成長期の方は1日あたり12mg、妊婦さんは18mgくらいの鉄の摂取が必要となります。
体内にある鉄は約4gと言われます。その大半の2/3は血液中の特に赤血球に存在し、一部は皮膚や筋肉、消化器といった組織、残りは肝臓や脾臓に貯蔵されています。
健康状態では鉄の吸収と排泄、貯蔵のバランスが取れていますが、上記のような理由により貯蔵鉄がなくなり赤血球が減少することで貧血の症状があらわれてきます。

治療と対策

鉄が欠乏して起こる貧血のため、鉄剤を服用することで改善されます。 服用から2週間くらいでヘモグロビンが増えることから、1~2カ月くらいすると貧血の症状が改善されてきます。鉄欠乏による貧血の症状が出ていることは貯蔵していた鉄も少なくなっているため、服用の中止をするとまたすぐに症状がぶり返してしまうことがあります。貯蔵鉄が十分に回復するまでさらに1~2カ月くらい服用する必要があります。服用の終了は検査の結果をみて、医師に決めてもらうようにしましょう。
薬剤で貧血が改善しからも、鉄欠乏となった生活習慣を改善することが再発の予防となります。
食事はバランスよくとることが大切です。鉄分だけ取ればよいのではなく、ビタミンやその他の栄養素をバランスよくをとることが大切です。
偏った食事やインスタント食品、また食事を抜いたりすることは鉄分の不足だけでなく、さまざまな栄養素の欠乏となりかねません。忙しい、ダイエットなどでバランスの良い食事をとれない時はサプリメントなど利用することもよいでしょう。

その他の貧血

ビタミンB12 ■ 巨赤芽球性貧血 / 悪性貧血
悪性貧血はビタミンB12が不足することで起こる貧血です。
ビタミンB12が不足することで、骨髄内で赤血球がうまく成長できずに不完全な赤血球となってしまいます。そのため赤血球としての機能がなくなり結果として貧血の症状があらわれます。
症状は一般の貧血と同じですが、その他にビタミンB12欠乏による手足のしびれなどの神経障害や舌炎や舌のつぶつぶがなくなったり痛みを伴う(ハンター舌炎)などがみられます。
他にビタミンの一つである葉酸の欠乏でも同様の貧血が起こることが分かっています。葉酸欠乏では神経障害などは見られません。 葉酸  
かつては原因が分からず死にいたることもあったため悪性貧血といわれていましたが、現在は原因が分かったことでビタミンB12の投与などによる治療が可能となりました。ただしビタミンB12の吸収に問題がある場合は内服での治療は困難で注射などの治療となることもあるため、医師による適切な治療が必要となります。
■ 溶血性貧血
赤血球の寿命は120日くらいですが、何らかの原因によって赤血球の寿命が短くなり、赤血球の造血と溶血のバランスが崩れることで赤血球が減少し貧血の症状が現れます。
溶血性貧血では溶血する原因によってさまざまな種類があります。
先天性(遺伝的)のものでは赤血球の形が異常となることで、赤血球がすぐ壊れてしまったり、膨らんだ球状の赤血球がつまってしまい、マクロファージに貧食されることで、通常の赤血球の寿命よりはるかに短くなってしまいます。
後天性のものでは赤血球に対して免疫の異常により抗体を作り出し、赤血球を攻撃し赤血球が壊れてしまうため赤血球が減少してしまうことで貧血症状がでてきます。
どちらも赤血球が壊れることで貧血症状が現れるのと、溶血した際に赤血球から漏れ出たビリルビンという色素によって皮膚が黄色く見えり、白目が黄ばんで見える黄疸が現れたり、腰痛や脾臓がはれるといった症状が現れます。
治療については原因によって異なります。
先天性のものでは遺伝的なもののため根本的な治療はありません。症状は軽度なことが多く治療を必要としないケースが多くあります。症状によっては赤血球を壊す働きのある脾臓を摘出することもありますが、根本的な治療にはなりません。
後天性のものは自己免疫異常によるもののためその反応を抑える薬剤などで症状をコントロールしていきます。一部は経過とともに自然に治癒することもあり、また、他の基礎疾患の治療により改善することもあります。
■ 再生不良性貧血
血液を作る骨髄が何らかの原因によって造血作用が障害を受けて起こる貧血です。他の貧血のように赤血球の原料などが不足して起こるものと違い、血液を作る機能の障害のため治療が難しく難病に指定されています。
造血機能の障害の原因については、感染症、薬剤(現在因果関係がはっきりしているものは使用されていません)、自己免疫異常などが考えられていますが、一部原因が不明なものもあります。
他の貧血と違って全ての血球の元となる造血幹細胞が障害を受けることで、赤血球の減少による貧血特有の症状のほか、白血球が減少すると免疫力が低下し感染症にかかりやすくなる。血小板が減少すると出血しやすくなります。
現在ではいくつかの治療が行えるようになりました。原因や症状によって異りますが、唯一根治としては骨髄移植となります。ドナーが見つかるまでは症状の度合いによってステロイドやホルモン、免疫抑制剤などの薬剤で症状の進行を抑えることができます。
貧血と言っても原因はさまざまあります。生活面で改善できるものから重篤なものまで幅が広いことから、貧血症状を軽く見ずに症状があればきちんと専門の先生に診てもらいましょう。