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お薬研究所 : 2010年12月号-#1 [2010.12.07up]

お薬研究所では「薬局でのこんな相談」や「病気の話」など、皆さまの健康に役立つ情報を掲載しております。
  » 病気の話「胃炎」
     ├ 1. 概要
     ├ 2. どんな病気?
     ├ 3. どんな症状?
     ├ 4. どんな治療?
     └ 5. 生活アドバイス
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  » 2010.11.25 お薬研究所:2010年11月号-#3 こんな相談「アルコール」
  » 2010.11.17 お薬研究所:2010年11月号-#2 サプリメント「茶カテキン」
  » 2010.11.09 お薬研究所:2010年11月号-#1 病気の話「腰痛」

病気の話「胃炎」

日常生活の中で“胃の調子が悪い”という経験は誰にでもあるでしょう。忘年会  や新年会 何かと胃に負担のかかる季節です。また、ストレスや過労でも発症する事もよく知られています。そこで、今月は胃炎についての話です。

どんな病気?

急性胃炎の原因にはストレスなどがあります胃炎とは・・・胃の粘膜に炎症を生じた状態。急性と慢性に分けられる。

(1) 急性胃炎
胃壁の粘膜に急性の炎症やただれがおこり、胃痛や腹痛がおこる。
その原因にはストレス(精神的、肉体的),睡眠不足、過労、暴飲暴食、不規則な食事、鎮痛剤等の薬物、アルコールや刺激物の摂取などさまざまです。
(2) 慢性胃炎
胃壁の粘膜に慢性の炎症が続く状態で、固有の症状がないのが特徴で個人差も大きく、胃痛のある人もいればほとんど症状のない人もいます。また、ほとんどすべての人にあると言われる病気ですが、年齢とともに発症の確立が高く加齢現象とも言われています。粘膜の状態もさまざまで、傷として認識できるものから粘膜の色が変色したもの、萎縮が見られるもの等があります。日本人に比較的多いのが、萎縮性胃炎でピロリ菌がその原因と言われています。
胃は消化管を成す管状の器官で、食道につながる噴門部と十二指腸につながる幽門部、それ以外の部分を胃体部と呼びます

胃の構造

それでは、人の胃はどんな構造をしているのでしょう。
胃は消化管を成す管状の器官で、食道につながる噴門部と十二指腸につながる幽門部、それ以外の部分を胃体部と呼びます。中身のない状態では、胃の壁はひだをたたみ縮んでおり内容量は50ml程度、しかし食物が入ってくるとその内容量は1.5~1.8Lにもなり体の外部からでも胃が膨らんでいる事がわかります。

胃の粘膜

胃の粘膜

胃壁は、3層構造になっています。粘膜層-粘膜下層-筋層そして筋層の外部には腹膜があります。粘膜には、胃小窩と呼ばれる穴があり、胃小窩の底には胃低腺と言われる管状の分泌腺があります。分泌腺からは、塩酸とペプシノーゲンという胃液が分泌されおり、また胃幽門前庭部のG細胞からは、消化活動を活性化させるガストリンというホルモンが分泌されています。
また、粘膜からは胃酸や胃液から粘膜を守るために粘液が分泌されています。さらにプロスタグランジンという活性物質により細胞増殖を活性化させ、損傷した細胞を修復しているのです。しかし、ストレスなどでそのような防御機能が低下すると粘膜は荒れた状態となります、これが胃潰瘍です。

胃の役割

胃の役割

それでは、胃はどのような役割を果たしているのでしょう。

  1. 食べた食物を貯留する
  2. 胃壁から分泌される胃酸により食物を酸性に保ち腐敗を防ぐ
  3. 消化酵素ペプシンによりドロドロした水溶性の分解産物とする
  4. 胃幽門部から分泌されるガストリンというホルモンにより消化を促進する

どんな症状?

急性胃炎
胃部不快感、膨満感、胸やけ、もたれ、みぞおちの痛み、胃痛、嘔吐炎症が強い場合には、吐血や下血等の症状が現れる事もあります。
慢性胃炎
  1. 胃食道逆流型・・・
    過剰に分泌された胃酸が逆流し、胸やけや胃痛、のどの痛み、胸の痛みとして感じる事もあります。
  2. 運動不全型・・・
    胃の運動が鈍くなり食べ物が胃の中に停滞し胃もたれや膨満感が現れます。

どんな治療?

(1) 食事療法 食事療法
急性胃炎・・・
胃を休ませて傷ついた粘膜の修復を待ちます。3日ほど経過を見ましょう。数日で粘膜は修復する為、少しずつ食生活を戻してゆきます。改善後も1週間くらいは消化の良い食事を心がけます。
慢性胃炎・・・
1回の食事量をやや少なめとし、刺激物や脂肪の多いメニューは避けます。消化良く栄養価の高いものを中心に摂るようにします。
(2) 薬物療法 薬物療法

胃の薬といっても、いろいろな作用のものがあります。その症状に合わせて使い分けが必要です。次に一般的な胃薬の分類をしましょう。

* 健胃薬
胃の運動や胃液の分泌など、胃の機能を高める薬。味やにおいによる刺激で唾液や胃液の分泌を促進します。
苦味健胃薬・・・センブリ、ニガキ、オウバク、苦味チンキ
芳香健胃薬・・・トウヒ、ウイキョウ、ケイヒ、ハッカ油、ショウキョウ
* 消化薬
食物の消化を助け食欲を亢進させる働きがあります。デンプン、タンパク質、脂肪を分解し消化吸収を高めます。
べりチーム、エクセラーゼ、セブンイ・P等
* 制酸剤
過剰な胃酸を抑える薬です。また、消化薬の効果を高めるためには酸はあまり強くない方がよいのです。消化酵素には至適PHがあり強酸性下では失活してしまうからです。また、制酸剤には作用時間の長いものと短いものとがあり、長期服用による副作用の発生にも注意が必要です。
制酸剤の作用時間と強さのグラフにしてみました。
制酸剤の作用時間と強さのグラフ
* 消化管機能
消化管を支配しているのは、副交感神経という自律神経です。したがって、これを興奮させれば機能が亢進し逆に抑制すると機能は低下します。
調整薬
・機能低下薬(胃痛、腹痛)・・・ブスコパン、ストロカイン
・機能亢進薬(胸やけ、吐き気)・・・プリンペラン、ナウゼリン、セレキノンガスモチン、ガナトンなど
* 消化性潰瘍
治療薬
・粘膜防御因子増強剤→アルサルミン、マーズレン、セルベックス、ノイエル
・胃酸分泌抑制薬→オメプラール、パリエット、ザンタック、アシノン

(3) ピロリ菌の除菌

ピロリ菌の除菌

胃は、胃液中の塩酸により強い酸性に保たれており、細菌の存在は否定されていましたが、ヘリコバクター・ピロリは“ウレアーゼ”という酵素を産生し胃液中の尿素を二酸化炭素とアンモニアに分解し生じたアンモニアにより局所的に酸を中和し胃粘膜に生存しています。その感染経路は明らかではありませんが、胃内に存在する事から、経口感染と考えられます。世界人口のおおよそ45%~50%が保菌者と言われており、日本においては40才以上の人の70%もがピロリ菌に感染しています。
しかし、発症率は約30%残りの70%の人は無症状です。
住み着いたピロリ菌により産生されるさまざまな分解酵素により粘膜が損傷し炎症することで胃痛、吐き気等の症状が出るのです。
食事療法および薬物療法でも効果が得られない場合は、まずピロリ菌の有無を検査します。尿素呼気検査という方法で簡単にわかるのです。そしてピロリ菌(+)となれば、除菌を行う事になります。プロトンポンプ阻害剤と抗生物質(アモキシシリン、クラリスロマイシン)の3剤併用で7日間服用します。その除菌率は80%と言われていましたが、抗生物質の汎用による耐性菌の発現により70%に低下したとの報告もあります。除菌は保険で行えるので、主治医の指示に従い行いましょう。

生活アドバイス

生活アドバイス

まずは、暴飲、暴食を避け規則正しく食事を摂るよう心がけます。食事や良質な睡眠は、体力を維持する為に大変重要です。また、ストレスを解消する為の時間作りも非常に有効です。ストレスがかかると胃の血流が悪くなり、傷ついた胃の粘膜は治りにくくなり放置しておくと症状として現れる事があります。

*急性胃炎の食事について*

急性胃炎の食事

症状の激しい期間は絶食し番茶Or微温湯
     ↓
症状の軽快とともに、重湯などの流動食を少量ずつ頻回に摂る
     ↓
次第に粥食から常食にもどす
食品は、胃酸分泌を促進しないよう刺激物(カフェイン、アルコール、タバコ)や熱すぎたり冷たすぎたりする物は避けるようにします。また、脂肪分やセンイの多い食品を控える事も大切です。食事を摂る時間にも注意しましょう。就寝前の食事は夜間の胃酸分泌を促進させます、胃の中身のない状態では過剰な胃酸により粘膜はいっそう攻撃を受けやすくなるのです。

*慢性胃炎の食事について*

慢性胃炎の原因は、食事や加齢、自己免疫因子などが考えられますが限定は難しく症状の軽い場合には、特に食事制限の必要はありません。バランスの良いメニューにて楽しく食事を摂る事が大切。ゆっくりとよく噛む事や、食間に適度な運動を取り入れるのもよいでしょう。

*摂取したい食品*

牛乳 牛乳は、胃酸を中和し、胃壁を保護する役割を持ちます。冷たいままでなく温めて飲むようにしましょう。
豆腐 豆腐は、良質のたんぱく質、V.B1を含みます。
魚類 魚類は、良質のたんぱく質を含む食材です。脂肪分の少ない白身の方がよいでしょう。煮る、茹でる、蒸すなどの調理法が消化が良くおすすめです。
卵 卵は、栄養価の高い食材です。半熟卵の消化時間が一番短く、かたゆで卵になるとおおよそ2倍の時間がかかりますので、刻むなどの工夫をしましょう。

V.C.(ブロッコリ―) V.E.( カボチャ、アボカド) βカロチン(人参、ホウレンソウ)等バランス良く取り入れましょうV.C.(ブロッコリー) V.E.(かぼちゃ、オボガド) βカロチン(人参、ホウレンソウ)等バランス良く取り入れましょう。また、塩分・糖分は控えめに!!日頃から、味付けは薄味をこころがけましょう。